不動産証券化
- 不動産証券化の歴史と進展
- 具体的な証券化手法
不動産の証券化とは、一般的に取引価格が高額になりがちで流動性が乏しいとされる不動産の取引について、所有権を小口化した出資持分にしたり、不動産の生み出すキャッシュフローを受け取る権利を証券の形にしたりすることで流動性を確保する技術のことです。
不動産証券化の先駆けは、1931年の抵当証券制度まで遡りますが、現代的な意味合いにおける証券化の始まりは、1987年の不動産小口化商品の登場等からと考えられています。その後1995年に「不動産特定共同事業法」が施行し、2000年には「特定目的会社(SPC)による特定資産の流動化に関する法律(旧SPC法)」が「資産の流動化に関する法律(SPC法)」へ改正されたことによって資産流動化型の不動産証券化手続きが簡素化されるなど、不動産証券化に関する法整備が進みます。また、同年の「投資信託及び投資法人に関する法律」(投信法)の改正により、不動産が投資信託の運用対象となったことを受け、2001年よりJ-REIT(不動産投資信託)がスタートしました。近年では、ホテルや物流施設、ヘルスケア施設等を投資対象とする特化型のJ-REITが登場するなど運用資産も多様化しています。
不動産の証券化が進展してきた背景としては、1990年過ぎから始まった地価の下落などを契機に、不動産の所有と経営を分離させたいという企業ニーズの高まりなど、不動産に関するリスク認識が変化してきたことが挙げられます。また、金融・資本市場における間接金融から直接金融への大きな流れの中で、投資用不動産が金融商品化していく過程でも大きく発展しました。
(1) 不動産投資信託
不動産投資信託とは、投資家から集めた資金を主として不動産等で運用し、その運用益を投資家に分配する集団投資スキームのひとつです。
投資信託は、多くの投資家から資金を募り、投資の専門家が運用し、得られた収益を投資家に分配する金融商品です。従来、運用先は主として有価証券に限定されていましたが、2000年の投信法一部改正によって、その運用先として不動産が認められ不動産の投資信託が可能となり、2001年には東京証券取引所に初めて不動産投資信託が上場されました(J-REIT市場の創設)。
(2) 資産流動化型不動産証券化
資産流動化型不動産証券化とは、不動産の証券化を目的に応じて類型化したもののうち、不動産を保有する企業等がSPC等のビークルに不動産を譲渡し、そのビークルが投資家に証券を発行して資金調達することを目的として構築された仕組みのことです。特定の不動産を対象にした資金調達という側面が強く、原則として資産の入れ替えは予定されていません。
(3) 不動産特定共同事業による証券化
不動産特定共同事業とは、1995年に施行された「不動産特定共同事業法」にもとづき、投資家からの出資をもとに不動産の取引を行いその収益を投資家に分配する事業のことです。同法では投資家保護のために資本金や人的基準要件を満たし許可を受けた会社が投資家から資金調達を行うことができるようになりました。
その後2013年の同法の改正により事業者の倒産リスクと隔離され、2017年の改正では、機関投資家などの適格特例投資家のみを対象とする場合には、届出のみで実施が可能になるとともに、小規模不動産特定共同事業も創設されました。また、事業規模を問わず契約書面等をインターネット上で交付することも認められるなどの規制緩和もされています。